VOICE
Vol.3
2018年6月
代表中村から生産者の皆さまへ
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Vol.03 需要が伸びる
加工馬鈴薯を
一緒に作りましょう
カルビーポテト株式会社
代表取締役会長中村一浩
1960 年、北海道増毛町生まれ。84 年、カルビーポテト株式会社入社。執行役員営業本部長、同経営推進本部長、カルビー株式会社北海道事業本部長を経て、2016年6月に代表取締役社長、2021年4月に代表取締役会長へ就任。

Vol.03
1960 年、北海道増毛町生まれ。84 年、カルビーポテト株式会社入社。執行役員営業本部長、同経営推進本部長、カルビー株式会社北海道事業本部長を経て、2016年6月に代表取締役社長、2021年4月に代表取締役会長へ就任。
2018年6月号に書かれた記事です。(一部編集)
一昨年の2016年、北海道を度重なる台風が襲い、馬鈴薯の生産は大きな被害を受けました。翌春には「ポテチショック」なる言葉がマスコミを騒がせ、ポテトチップの供給に支障を来したことは記憶に新しいところです。しかし、17年は契約生産者の皆様にしっかりと馬鈴薯を作っていただいたおかげで、同年の10月から現在に至るまで前年比及び計画比を上回る販売ができています。
今年に入りまして、カルビーグループでは未来に向けて目標を掲げました。それは、馬鈴薯関連製品の原料を100%国産化するというものです。ポテトチップに限らず、Jagabeeも含まれます。現在、米国から3万5,000tを超える馬鈴薯を輸入していますが、これを国産に置き換えていく方針です。加工馬鈴薯の需要は伸びています。既存の契約生産者はもちろん、新規に我々との契約栽培を求める生産者と一緒になり、この局面に臨んでいきたいと考えています。
当社のビジョンは世界一のポテトカンパニーになることです。同時に、日本の契約生産者を世界一のレベルにまで引き上げます。そのために次の四つに取り組んでいます。
① 夢の新品種の普及の拡大
② 毎年豊作を実現できる栽培技術の開発・普及
③ ストレスを感じない作業体系の実現
④ 相互に情報交換できるネットワークを作る
以前、「新たに取引できる作物の開発」という項目も挙げていましたが、馬鈴薯の100%国産化を優先させたいため、ひとまず下ろしました。
何をおいても品種の力は大きいです。国内には公的な育種機関がありますが、我々は自社の研究所で独自に品種の開発を進めています。ジャガイモシストセンチュウ抵抗性の付与は当然として、16年から一般栽培が始まった「ぽろしり」や今年からの「ゆきふたば」と続々と新品種を投入しています。そうか病に強いぽろしりについては3年目の今年、2万tの数量を計画するまでに成長しました。今後も打撲に強い夢のような品種が登録を待っています。機械化がより進展するなかで、収穫時に多少雑に扱っても打撲が付かないとなれば、高性能なポテトハーベスターはその能力を最大限発揮できることになるでしょう。契約生産者によっては馬鈴薯の収穫をお盆過ぎあたりの早期から希望する方もいます。それに応える早生品種も準備しており、収穫期を前後に伸ばすことで馬鈴薯の増反も可能になると見ています。
労働力不足に対しては、とくに手間のかかる収穫で合理的に面積をこなしていくことが重要です。通常、馬鈴薯の収穫ではポテトハーベスターの機上に選別要員を乗せ、手作業で石や土塊、病障害品の除去が行なわれています。我々が推進しているのは畑で選別せず、掘り取りに専念していただく全量出荷という取引です。
そのうえで、畑から貯蔵庫までの運搬と選別に関してもわずらわしさを省いた体系への転換を図っています。
運搬では、「ピート車」(けん引式セルフアンローダー)と呼んでいる容量が12、3tのトレーラーに加え、17年は小窓を改造したビートダンプを試してみました。ピート車は大きいので場所によっては使えませんでしたが、このビートダンプであれば難なく入っていけます。いずれも標準的なスチールコンテナに収めるよりは圧倒的に効率的です。
全量出荷取引では夾雑物が混入するケースがあります。当社が運用している画像選別機はこの夾雑物を機械的に弾くことが可能で、人手を補助するような格好になっています。
馬鈴薯の生産は、お互いに省力化なくして成り立ちません。直近の事例として品種と省力化の部分を述べましたが、契約生産者の皆様に安心して馬鈴薯をたくさん作っていただけるよう、具体的な構想や解決策を示しながらサポートしていくのが我々の役目です。
東北や道央の
水田地帯で
契約栽培を拡大したい
先の台風災害では約3万tの馬鈴薯がショートしました。その際、感じたことは産地構成をある程度分散しなくてはいけないということです。現在の調達では十勝の比重が非常に高く、網走や上川など異なる気候でリスクヘッジしていますが、十分とはいえません。そこで、新たにターゲットとしているのが東北や道央の水田地帯です。17年には専属のフィールドマンを道央に配置し、当地では徐々に契約栽培が増えています。
水田での馬鈴薯の栽培ということでは九州の出水や鳥栖をはじめとする地域で実績があります。
このノウハウを生かし、経験がなかった東北の宮城では農協や行政の応援もいただいて北海道の既存産地とそん色がない収量や品質を実現しています。
水田は水を張れることが特徴です。馬鈴薯を作付けしない間に一定期間、水を浸しておけば病原菌の除去や連作障害の回避に有効に働きます。水田というこのインフラを使わない手はありません。これから厳しさを増していくだろう稲作の次のステージを共に踏み出せればと考えています。
初めて馬鈴薯の生産に着手するといっても機械投資で躊躇するかもしれません。その点は心配しないでください。当社では最長で2年、機械の貸与が可能です。それで実際に馬鈴薯を作っていただき、収益性を確認して自信が持てたら機械を買ってくださいと提案しています。所有形態は個人ではなく、高性能なものを共有することが前提です。機械の償却までトータルに捉えたうえで、どれくらい利益が見込めるのかをフィールドマンが提示しますので、リスクは最小限に抑えられます。
契約生産者の募集は東北や道央の水田地帯にとどまりません。対象は全国です。ただ、土地や運搬経路の条件などがあり、なかにはお断りする場合もあると思います。あらかじめご了承ください。
会社設立の原点である
農工一体の精神を
大切に
当社はカルビーの原料子会社として1980年に設立されました。その際、実質的に深く関与した松尾雅彦(元カルビー社長)が2月12日に永眠しました。
松尾は当社の設立に強い思いを持った人でした。当時、本人が認(したた)めた手書きの設立の目的には、当社のコーポレートアイデンティティー(ロゴ)マークである農工一体の「伸びゆく芽と大地、結び合う手」(限りない力〈可能性〉と繁栄)につながることが触れられています。原料生産者側とのコンフリクトマネジメント(注:コンフリクトとは意見や利害の衝突、葛藤、対立といった概念を指す。組織運営でネガティブに評価されがちなこうした状況を組織の活性化や成長の機会と捉え、積極的に受け入れて問題解決を図ろうとする考え方)に成功するには技術革新や新品種が必要だとあります。
最近よく語っていたのは「バックキャスティング」という言葉です。将来なりたい姿をしっかりと描いてから、それに向かって進めていく。これまでの流れを汲んで次の時代を見るのではありません。
その土台となるプラットフォームにポテトリサーチセンターを置き、地域に合う品種を開発したり、高収量が得られる技術を開発してそれを普及させていくことで未来を形作っていきます。我々は、松尾のこうした思いを胸に、世界一のポテトカンパニーになることを目指します。(談)
ポテカル No.117 2018年6月
発行:株式会社農業技術通信社